2013年8月13日火曜日

【和訳】 歌詞 - Ab-Soul "The Book of Soul" (by Atsu from Japanovas)

今回は、Top Dawg Entertainment所属のAb-Soulの、個人的に一番好きな曲を和訳してみました。
セカンドアルバムControl Systemから「The Book of Soul」という曲です。


自身の過去やパーソナルな部分に触れるラップはヒップホップの魅力のひとつと言われていますが、この曲よりラッパー個人に迫ったものはあまりないと思います。

「The Book of Soul」は、25歳という若さで自ら命を断ったAb-Soulの恋人Alori Johについての曲です。

AloriがTDEファミリーの一員として音楽活動をしていたのはご存知の方も多いと思います。ケンドリックの作品に参加したり注目を浴び始めていたアーティストです。The Love Religionというソロアルバムも発表しています。

Control Systemリリースの数ヶ月前に突然起こった悲劇についてラップするのは相当難しかったと思います。
その分、このリリックには表現しがたい重みがあるように感じます。

曲中に何回か登場する宗教的シンボリズムも、曲全体により深みを与えていると思います。
決して簡単な人生ではなかったことを強調しつつ、最終的にはそれでも生き続け、音楽を続けていく決意を歌っています。

その流れから、Ab-Soulの決意に賛同するかのようにBlack Hippyの面々の攻撃的なラップが始まる瞬間は鳥肌ものです。(アルバムの曲順でいうと「The Book of Soul」の次が「Black Lip Bastard feat. Black Hippy」)。

映画でいえば、最終決戦を前にして追いつめられた主人公が仲間の力をかりて再び立ち上がる感じです笑


トラックも含めて素晴らしい曲だと思うので、ぜひこの和訳を読みながら聞いてみてください!

ちなみに、Ab-Soulが常にサングラスを着用している理由も曲中で語られています。




Ab-Soul - "The Book of Soul"

君のお母さんに「ジョブの書」を読むように言われた
でも今から読み上げるのはソウルの書だ
この苦難だらけの世界に、元気な赤ん坊として生まれて来た
でも10歳のときスティーブンス・ジョンソン症候群にかかってしまった
当時の医学じゃ死ぬ可能性が80パーセントあった、笑えないだろ?
高熱にうなされたし目も腫れ上がって、何ヶ月たっても眩しくて目が開けられなかった
皮膚の色々なところにも症状があらわれて唇の色も変わってしまった
もとよりダークな色になってまるで別人のようになった
妹にも誰だか気づいてもらえない程に
いま思えば賠償金くらいもらえてたかもしれない
精神科医にはこの病気がトラウマになるって言われたけど、俺はこの通り大丈夫だ
まあでも、病気のせいで中学生のときは女の子にモテなかった
君だって最初は俺のことなんて気にもかけてなかった
最終的には仲良くなったけど、俺は空気のような存在で君は学校中で一番の人気者だった
いや、俺に言わせれば君は学校中っていうか世界中で一番だよ
べつに俺たちが付き合ってるから言ってるんじゃない
君が素晴らしい成長を遂げるのをこの目で見れて良かったと思ってる
俺たちがいつも学校で同じクラスだったのは皮肉だよ
いつも宿題を写させてくれたよな
まあ君の宿題も間違い多かったけど、君がいなかったら多分卒業できてなかった
気がついたら俺たちは付き合い始めてた
俺たちの恋はハイだった、いま俺が火をつけてるこのジョイントみたいに
とくに最初の何年かは本当にエキサイティングだった
ラップし始めてからほかの事はどうでもよくなってきた
金もなくなってきてデートにもあんまり行けなかった
Sounwave(TDE所属のビートメイカー)のビートを使ってドレイクをなんとか超えようと必死だったから
毎日君といることもできたけど、音楽のための時間も必要だった
君もシンガーで、同じ目標を持っていたから理解してくれた
家族にもラップで成功するなんて無理だって言われたけど、君は信じ続けてくれた
順風満帆ってわけじゃなかったけど、結局は別れることはなかったよな
一緒じゃないと色々上手くいかないって分かってたから
7年、7年だ
孫の顔を見たり、本当はそういう終わり方をするはずだった
幸運なことに人生をめちゃくちゃにされるのは慣れてる
でもなぜだ神様?俺がなにか悪い事をしたのか?
なんでLoriなんだ?なぜ彼女を俺から取り上げたんだ?
彼女のエンジェル(Aloriの本名はLoriana Angel Johnson)のような顔が天国に必要だったんだろうと思う
君の写真はまだ鏡に貼ってある
信じられないくらいこわいし、死亡告知もまだ見れてない
こんな時だからウィードを吸ってる、空を飛んでるのかと勘違いするくらいハイだ
このスプリフを吸い続けていたい
マヤの予言は結局外れなかったみたいだ
2012年、俺の世界は終わった
君はよく未来が見えるとか言ってたけど、どうやら違ってたみたいだよ
なにせ俺の未来にはずっと君がいたんだから
その日の前日、君は俺に「愛してる」と言ってくれた
だから俺は、もっと愛していると返した
ラップなんかやめて、マイクなんて置いて、タワーから飛び降りて君のことを探しに行きたい
でも俺はここに留まらなきゃいけない
あの日、君の目を見て誓ったから
「何も俺を止めることはできない。たとえ君でさえも」
だからこのままプラン通りにいこう
輪廻転生が本当だとして、もし道に迷わなかったら
あの場所で会おう
もし君がここに残していった全て、俺すら忘れていたとしても
時間や空間すらない場所で君のことを愛し続ける
目を閉じれば君の歌声がうるさいくらいに聞こえてくる
Love Religionって誰のことだったのか、結局世界に教えることはできなかったけど
この曲のために泣く振りなんてしない
ただSincerely Yoursと書いて
君を輝かせるために生きていく
(Sincerely YoursとLet You ShineはThe Love Religionに収録されている曲のタイトル)

俺がこの世で一番愛しているものが次々と奪われていく
もし俺が28歳になる前に音楽や母さんも奪われたら
そのときはカート・コバーンみたいに出て行くと思う
神の存在は信じてる
でも神と対話した事はまだない
象徴的にはあるかもしれないけど、もしそうだとしても神は俺のことは好きではないだろう
そうとは思いたくないけど
ただ言えるのは、どんな事も可能だけどスペシャルな人間は一人もいないということ
母親にラジオも取られたし、クレム(Ab-Soulの継父)にはテレビも取られた
でも今の俺ならラジオにもテレビにも出てる
コントロールシステムに王座を奪われるな
ただただ成功を祈って、そして自分のソウルに鍵をかけないように
SOUL!




■ ライター・プロフィール

今回の記事はJapanovasのAtsuさんに寄稿して頂きました。
Atsuさんのブログや音源も是非チェックしてみてください!