2013年7月9日火曜日

【和訳】 インタビュー - カニエ・ウェスト 『YEEZUS』の世界観と精神性 、これまでのキャリアについて(Kanye West)

6/16日付け、NY Timesでのカニエ・ウェストの『YEEZUS』についてのインタビューを和訳しました。

カニエ・ウェスト(Kanye West)のキャリア、過去のアルバムのことから、新作『YEEZUS』の製作秘話、YEEZUSとは何者なのか、自身の認識についてなど、様々なところに突っ込んでいます。








あなたのデビューアルバム、『The College Dropout』が発売されたとき、みんなが音楽以外のことで、あなたについて連想したのは、歴史の中での自分の位置について文句言うやつが出て来たぞと。「何で俺のアルバムが5つ星じゃないんだ」って。

俺は、自分で主張しないといけないと思ってる。
7年生(中学2年生)のとき、俺はバスケットボール・チームに入りたかった。俺はチームに入れなかったから、その夏は練習したんだ。俺はサマーリーグに出場した。俺のチームは優勝したんだ。俺はポイントガードだった。
そして、8年生に進んだとき、俺は練習して、全てのフリースロー、全てのレイアップを決めた。それで、次の日に掲示板を見たら、俺の名前は無かったんだ。俺はコーチにどういうことだって訊いたら、あいつらは「君は載ってないんだよ」って。俺は「でも、俺はシュートを片っ端から決めたぞ」って。
次の年、俺は高校一年でジュニアチームに入ってた。それくらい俺は上手かったんだ。でも、俺は8年生のときにチームに入れなかった。なぜなら、数人のコーチのせいで。それで、数回のグラミー賞が、数人のレビュワーが、数人のファッション界の人が、数人の、とにかく、そいつらがみんな、あのコーチと同じだったんだ。
俺は8年生のときに、「俺は全部のシュートを決めたから、このチームに入るにふさわしい」って言えるようなポジションにいない気がしてしまった。だから、今は俺に権利をよこそうとしない奴ら全員に言ってやるんだ。


それで、あなたはシュートを決めたって分かってた。

うん、君は俺をチームに入れてくれたね。それで、俺は自分のプラットフォームを使って、みんなにフェアじゃないぜって言ってやるんだ。いつも俺はインターネット中に広がって、風穴をあけるような、大きなものを持ってた。それは正義のための戦いだ。正義。それで、正義って言葉を使うとき、それは戦争じゃなくてもいいんだ。みんなが正しく夢を見れるように、道を綺麗にすることだって正義になりうる。俺がプレイする競技場がフェアであるように、綺麗にすることだって、正義になりうる。分かるだろ。

もしマイケル・ジョーダンが審判に向かって叫んでもいいなら、俺、カニエウェスト、音楽界のマイケル・ジョーダンだって、「これはおかしいぜ」って言っていいんだ。


あなたはグラミー賞をたくさん取ってるじゃない。

『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』、それに『Watch the Throne』を俺は1年間で両方作ったけれど、どっちもアルバム・オブ・ジ・イヤーにノミネートされなかった。これは統計的に正しいかは分からないけれど、俺は、俺の歳で誰よりも多くのグラミーを当然取ったと思ってる。だけど、俺は白人との勝負でグラミーを取ったことは一度もない。
でも、大事なのは、俺はグラミー賞なんか気にしてないってこと。ただ、もっと正確に評価してほしいってだけだ。


あなたは、歴史に残る名盤が正しいものであってほしいってこと?

そうだね。俺は、あいつらに俺達の前で歴史を書き換えてほしくないんだ。少なくとも、俺の時計の上ではね。俺はラップ・アルバム・オブ・ジ・イヤーにしろ、何にしろ、取ることができた瞬間を本当に感謝するんだ。でも、しばらくすると、「ちょっと待てよ。これはフェアじゃないぞ。これは出来レースだ。」って気付くんだ。

俺が覚えてるのは、Gnarls BarkleyとJustin Timberlakeがどっちもアルバム・オブ・ジ・イヤーを取れなかったときに、俺はジャスティンの方を見て、「君のためにステージの上にいってやろうか?分かるだろ、君は俺にあいつらと戦ってほしいかい?」って。


・・・、君のために。

正しい状態のために。俺は物事を変えられてしまうほどに、とても説得力があって、とても影響力があって、とても適切なんだ。だから、ミュージシャンになりたい少女が、個性の無さ(共感しやすさ?)と声によって、世界に何か特別なものをもたらしたら、そしたら俺達が出ていって、「おい、本当にコレが今年の一番デカいことかい?」って言ってやる方がフェアなんだ。だって、そしたら俺がそこに居合わせているからね。


でも、その本能が君を迷走させたよね?MTVビデオミュージックアワードのときに、テイラー・スウィフトを妨害したり、そういうの。

(その本能は、)いつだって、俺に、素晴らしさを完成させるだけなのさ。いつだって、俺を荘厳な真実と素晴らしさに誘うだけ。美しさ、真実、素晴らしさ。それが全てだ。
Mr. West interrupting Taylor Swift’s appearance at the MTV Video Music Awards at Madison Square Garden in 2009.
"ウェスト氏が、2009年にマディソン・スクエア・ガーデンで、MTVビデオミュージックアワードにて、テイラー・スウィフトを妨害しているところ。"


じゃあ後悔はしてない?

俺はひとつも後悔してない。


あなたに"後悔"という概念はある?

もし、誰かが、このインタビュー記事を、何らかの謝罪を求めて読んでいるなら、そいつは今すぐに読むのをやめてしまうべきだね。


でも、それについては、あなた自身が過去に謝っているよ。

そうだね、俺は人間として弱くなったなと思う。俺のメッセージは完璧に説明されてはいないんだ。俺は人間として、圧力に屈してしまった。


じゃあ、あなたが謝罪したのは圧力に屈したからなの?

そうだね。


とすると、もしあなたが、あの行動自体と、その後の謝罪と、どちらかを取り消せるとしたら、謝罪の方を取り消す?

ひとつ教えてやろうか?俺はそれに答えたっていいんだぜ。ビビってはいないんだ。でも、それは混乱を招くだけだ。これはとても影響力の強いことなんだ。人々はこの件について、とても強い感情を持っている。"Dark Fantasy"は、俺のとても長くて、間接的な謝罪だったんだ。君は、みんながどれだけ、あいまいなお世辞を言うか知ってるだろ?俺は「お前達に、俺に何が出来るか見せてやるよ、だから俺をもう一度受け入れな。お前達の棚に俺が欲しいんだろ?」って感じだ。


アルバムについて


その視点から、あなたのアルバムを見てみるのは、すごく面白いね。

俺は公共ってものと、あまりロマンチックな関係じゃないんだ。俺は、アンチ・セレブだし、俺の音楽(ヒップホップ)は、アンチになるってとこから始まってる。あれは、みんなのために、みんなが欲しいものを作ってやったアルバムだ。俺はあのタイミング、あのときの俺と社会、俺と懐疑的な購入者の関係では、"Black Skinhead"(YEEZUS収録)は出せなかったと思う。


それは、『Dark Fantasy』をある意味で不名誉なアルバムにする?

俺はいつでも80%は、最低でも渡したいと思っている。それで残りの20%は物の見方だ。もし君が老人の家に行ったら、何もくれないぜ。あいつらは100%好き放題だ。俺はスティーブ・ジョブズの話を聴いて、彼は100%好き放題やったに違いないと感じる。でも、きっとスティーブ・ジョブズでさえ妥協してたぜ。リック・オウエンスだって妥協してたんだ。分かるだろ?カニエ・ウェストでさえ妥協したってことだ。ときに、自分自身でさえ、事後まで、自分が妥協したことに気付かない。そして、それを後悔するんだ。
俺は『Dark Fantasy』をディスしたくはない。満たされることが絶対に無いのは俺自身であり、認めて真実を告げるのも俺自身なんだ。俺が他人のために物事を新しくしてやれるくらい、自分自身のために物事を新しくするには、「これはもっと良く出来た」と言うしかないんだ。


あのアルバムを妥協だと考えるのは興味深いね。あのアルバムは、あなたが「オッケー、俺に期待されてることは全て忘れてくれ」っていう感じなのが凄く明確にみえた『808&Heartbreak』の流れを汲んでいると思ったのだけれど。(それくらい攻めていたということだと思われます。)

そうだね。みんな、あのアルバム("808s")に関しては、名義を変えろって言ったよ。


レーベルの人とか?

うん、色んな人たち。別の名義でやれって。それで、アルバムが出たら、みんな「おい、もっとラップがあれば良かったのに」って感じだった。でも、俺が歌が上手くないっていうのが、"808s"をあそこまで特別にしたと思うぜ。


完全にトレーニングされたプロフェッショナルな歌手じゃ、あれは作れなかったよね。あんな風な形では絶対に出てこなかった。

そう。俺は自分が色んなことが下手だって事実が大好きだ。分かる?俺は35歳だけれど、永遠の5歳児。俺はいつも何かをするとき5歳児なんだ。


"Graduation"と"808s"の間には色々なことがあったよね。言うまでもなく、多くの苦悩、多くのタフなこと。(カニエの母親が2007年に他界しています。)

クリエイティブなアウトプットは、ただ苦痛なんだ。一瞬陳腐になって言うよ。偉大な芸術は苦痛からくるんだ。でも、それよりも大きな命題をたてるよ。偉大な芸術は、偉大なアーティストが作るんだ。痛い思いをしたけれど、それでも超極端で、ラジオの音をまるまる変えてしまったアルバムは作れなかった人は、世の中にいくらでもいる。


あなたは、808sがあなたのアルバムで一番インパクトがあったと思う?

Graduationと808sの間の、カニエウェストの調理法を、もっと上手く見つけ出して、もっと成功した人はいるよ。Strongerは、あそこまで昇華された最初のダンス・ラップソングで、808sは最初のそういうアルバム。あれは最初のブラックニューウェイブアルバムだったんだ。俺は、このプロジェクトまで、自分がニューウェイブだって気付いてなかった。従って、Peter SavilleやRaf Simonsとの俺のコネクションや、ハイエンドなファッション、マイナーなコード進行もね。俺はニューウェイブを聴いたことhないけど、俺はブラックニューウェイブのアーティストなんだ!


歌うのは、あなたがずっとやりたかったこと?

俺は言いたい事がいっぱいあったからラップに入れ込んでたし、歌はあまり上手くなかったから。


あなたはずっと前に出たかったにも関わらず、無名の頃が良かったなと思ったことはある?

あるよ、俺はぎりぎりまで無名にしがみついた。俺は「薄い黒色の肌の友達はマイケルジャクソンみたい」ってラインを書いたときから、ビッグスターになるって分かってた。そのときは、バージンミュージックストアがあって、俺はそこに行ってエスカレーターを登りながら、自分に「無名の最後の瞬間を噛みしめてるんだ」って言い聞かせてた。俺はここまで来るって分かってた。俺はこういうことになるって分かってたんだ。


でも、最初はプロデュースからだったでしょ。特にJay-Zがあなたを"The Blueprint"で徴用した後。

俺はもともとティンバランドみたいなトラックを作ってたし、DJプレミアみたいなトラックを作ってた。でも、ジェイZはソウルな音をポピュラーにしてしまう、驚くべき表現者だったんだ。それで、俺は眠っていたけれどソウルな音を作れたから、ついに両親が俺の中にこめたメッセージを伝えるプラットフォームを手に入れたんだ。それで、Dead Prezや、Mos Def、Talib Kweliが、それを引き出すのを手伝ってくれて、俺はジェイZが用意してくれたプラットフォームの上で、ずさんだけどラップを出来たんだ。
それまでは、俺がラップしたくても、俺のラップはちょっとCam'ronやMase、それかジェイZ、とにかく誰か他の人みたいだった。それで、Dead Prezとつるんで、ようやく、どうすればメッセージのあるラップを書けるかが分かって、All Falls Downを15分で書けたんだ。


ほんとに?

ほんとだよ、そうやって自分のスタイルを見つけたんだ。俺はただ、そいつらとニューヨークでいつもつるんでただけ。俺はあいつらのためにプロデュースした。俺はいつでもピンクのポロシャツで、どこにでも潜り込めた。でも俺はDead Prezだった。それで、今は、いつでも責任がついてる。
Jay-Z, left, with Mr. West at the Hot 97 Summer Jam in 2005.
Theo Wargo/WireImage for Hot 97
Francois Guillot/Agence France-Presse — Getty Images

Jay-Z, left, with Mr. West at the Hot 97 Summer Jam in 2005

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あなたが"Dropout"で出来なかったか、やってなくて、"Late Registration"でやろうとしてたことは何?

俺はオケで違うことをやろうとしてた。俺はヒップホップと混ぜようと思ってたサウンドで、どこまで世界を広げられるかってバイブスだったんだ。多分シカゴの人間だからかな。Quincy Jonesみたいに。




でもあなたはここまで来た。ジョン・ブライオンとも仕事したよね。

俺はジョン・ブライオンがやってきたいくつかのプロジェクトの音がとても好きだった。俺はいつも、お熱で狂ったガキだと思われてたけど、俺はただ進んで、本当に尊敬する人とやっていくんだ。俺は尊敬する人には完璧に頭を下げるんだぜ。




あなたが一番みんなを驚かせることをしたのも、その時期だね。ブッシュ大統領をハリケーン・カトリーナでテレビで批判した(カニエはハリケーン・カトリーナの際に、進まない救助活動に苛立ち、「ブッシュ大統領は黒人のことなんて気にもかけていないんだ」とテレビで発言しました)。僕にとって、あの瞬間は、あなたの"ポップなフォーマットで、メッセージを主張する"という流れのピークだったように感じられた。曲では無かったにも関わらず。

そうだね。あれは誰かの人生や、この世代において、物凄くポップな瞬間だったと思うよ。なんというか、俺の父親の世代は、メッセージを主張する世代だった、そうだろ。(一つ上の世代であれば、あれくらいはあっただろう)。でも、あれは俺が主張する人間として存在する、そのたった一部なんだ。




あなたは、意識してあれをやった?それとも完全な衝動だったの?

うん、あのときは慌てて、逃げに入ってた。あのときについて考えてみると、俺はJuicy Coutureのポロシャツを着てる感じだった。俺たちは、(人種問題についての)戦争の準備が出来てるって感じじゃ無かったんだ。




あの時よりも、あの後のほうが人種的に物事を見るようになった?『Watch the Throne』のほうが、よっぽど激しさがシャープだよね。

いや、自分自身について、よく言葉を選んで表現できるようになっただけだよ。"All Falls Down"(1st『College Dropout』収録)から変わってない。俺は、俺の父親の子どもなんだ。俺の母親の子どもなんだ。そうやって育った。俺は偉大な行動派のアーティスト、Gil Scott Heronの血統なんだ。でも俺は素敵な事を好んだMiles Davisの血統でもある。分かるだろ。




『Watch the Throne』で、あなたとJay-Zはどっちのほうが暗いムード?

いつだって暗いムードにいるのは俺だ。それに、あのとき俺はまだ納得いってないことがあった。ツアーして、これもやって、あれもやって、全部自分で。俺が必要だったのは、なんというか、




緩衝材?ある種の。

そう、俺はJay-Zとやる必要があった。




あなたの横に立って、「こいつはクールだ。カニエはクールなんだ。」って言ってくれる人が必要だった。

そう、たとえ歯に絹を着せていたとしても。



社会とプライベート




Jay-ZやDiddyをみると、彼らは90%くらいの時間は心地良さそうにみえる。だけど、あなたに関しては、50-50、30-70?

90%くらいの時間は、俺は不幸に見えるかもしれない。




でも、あなたは凄く社会的な関係にいる。見た感じでは凄く満たされた関係。子どもが出来るじゃないか。

自分がある女性を愛したり、女性に愛されたりしていると、ある種のエネルギーが湧いてくる。ある意味、集中しやすいんだ。




恋愛が不安定なときは集中を阻害される。他の生活の分野にまで影響を与える。

そう、俺が「おい、俺は5年後には集中力がマジで切れてしまうぜ」って言うときは、そういうことなんだ。俺はガールフレンドが欲しいタイプのロックスターなんだ、分かる?俺は恋して、集中していたいタイプの魂なんだ。それが俺にインスピレーションを与える。




"Keeping Up With the Kardashians"(テレビ番組)では、キムが服を選ぶのを手伝う、凄く優しいシーンがあるよね。

それは愛していたからなんだ。でも、みんなが色んな物の見方をする中では、色んなことが難しい。そのときに、みんなから多くの反動があって、もう、あの番組には出ないって決めたんだ。あの番組と揉めてるって訳ではないけれど、世間の過激な反応に対して嫌気がしてるんだ。だって、俺は素晴らしい人間を好きになっていて、助けたいと思っているだけなのに。




あなたは、家族というものについて、母親が亡くなったあと、考え方が変わった?

うん、だって俺のママは、分かるだろ、俺は家族がいるけど、俺は80%の時間をママと過ごしてたんだ。俺のママは基本的に、、(沈黙)




家族だった。

そう、その件についてはそれが全てだ。
Mr. West with his mother, Donda West, in 2007, the year she died.
Mr. West with his mother, Donda West, in 2007, the year she died.



親という立場については、どう思ってる?

それは面白い質問だね。強力な質問だ。ひとつは、俺は自分の子どもや、子どもの母親については、手段を選ばずに守り通すってことだ。シンプルにそれだけ。




あなたは、これまでに、同じくらい猛烈に守ろうとしたものはある?

俺は自分の父親としての立場については考えをあまり説明したくないけれど、分かるだろ、まだ完全にそういった考えが育ってるわけじゃないんだ。まだ子どもはいない。




まだ実際に子どもがいる状況を経験していない。

その通り。うーん、俺はアメリカに自分の家族について語りたくないな。なんというか、俺の子どもだ。アメリカの子どもじゃない。


YEEZUSの誕生


あなたの新しいレコードを聴いて思ったことの一つは、これは『College Dropout』と正反対だってこと。あなたが脱皮してるなと感じた。昔は「もっと多彩なサウンドがほしい、もっと複雑なラップがほしい、とにかく色々ほしい」って感じだった。いつから変わったの?

建築学、ル・コルビュジエ(フランスの建築家)のランプは、とても大きなインスピレーションだった。俺はパリでロフトスペースに住んで、リビングでレコーディングしてた。考えうる限り、最悪の音響環境だったんだ。でも、その分、曲は超シンプルじゃないといけなかった。だって、複雑な音で、たくさんのベース音を入れたら、その空間では上手くいかない。これが今年の始め頃のこと。

俺は博物館に行って、ルーヴル美術館は家具の展覧会をやってて、俺はプライベートも含めて5回も行った。それで、俺は実際のル・コルビュジエの家を見に行って、それについて語った。なんでそういう風にデザインしたんだろうって。過去最大の窓ガラスをつけたりしてたんだ。

俺はラッパーという形を持ったミニマリストだ。だから、そういったバイブスを全て持ちこんで、それで最終的にはRick Rubinのもとに帰ってくるってのはクールだ。俺はいつもDef Jamについて考えてたから。




彼(Rick Rubin)のレコードは、いつも"Rick Rubinによって削られた"って書いてあったね。

彼は、もう完全に消化してるんだ。俺はまだミニマリズム(最小限主義)について学びはじめた子どもで、彼は師匠だ。彼と一緒に仕事が出来るのは、本当に恵まれている。彼と仕事をすると、俺は謙虚になる。何故、この俺が『Watch the Throne』に『Dark Fantasy』をプロデュースしたにも関わらず、アルバム・オブ・ジ・イヤーを取れてないのかを、気付かせてくれるんだ。

このアルバムは俺がこれまでに一度もやらなかったことばかりだ。俺の声とドラムだけとか。みんなが「騒がしい」というもの、それでも、ただのドラムビートと組み合わせれば、例えばRun-D.M.C.やKRS-Oneのレベルまで削ぎ落せる。俺が最後に覚えているだろう曲は、お前達がチープだって言うだろう曲だけれど、J-Kwonの"Tipsy"みたいなやつだ。みんなは、それが低クオリティで、より知的じゃない形のヒップホップだって言うかもしれないけれど、それが俺にとっては、いつだってナンバーワンだ。

俺の新作にはオペラのサウンドは無い(※前作の『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』はオペラ風のビデオまで録り、派手に作られていました)。言ってることが分かるかい?超低音質なんだ。俺はまだ少し上流・インテリ気取りな感じだけれど、でも上流・インテリ気取り天国な曲は完全に取り払った。全部まとめて取り払ったんだ。




このアルバムで、ベースと耳触りを強調しているのは、曲のボディを特別扱いしているけれど、それは上流・インテリ気取りじゃないんだね。

うん、それはトラップやドリルやハウスみたいなもんだね。俺はシカゴの深い影響をこのアルバムに織り込みたかった。それで、シカゴの古いハウスミュージックを聴いたりしたんだ。俺は"Black Skinhead"でさえハウスに組み込めると思うぜ。"On Sight"はアシッド・ハウス、それで"I Am a God"は超絶ハウスだ。




本能的な音。

そうだ、本能的で部族的だ。俺はただ削ぎ落としたかった。全ての、分かるだろ、服やファッションについて俺達が語ることさえ、時として道を塞ぐんだ。俺の今の服を見てみろ。超直観的だろ。




5年前に比べて、今は服を選んで着る時間は短くなった。

間違いなく短いね。




あなたの5~7年前からの服装を見て、それは、

ああ、自分を殺さなきゃ。それだけ。自分を殺すんだ。




あなたの中で長年盛んだったのは、ある種の、社会の部外者としての自己認識、社会の中に入ろうともがく姿だったと思う。あなたは今、この瞬間でも、そう感じる?

いや、俺はもうそういった風には思わないね。もう中に居たくないって思うんだ。俺は自分を社会の中に招待しないことにしたんだ。




何が変わったの?

より実質的な自己認識、自分への信頼だと思う。長生きするほど、自分に自信が湧いてくる。カニエという概念と、虚栄心という概念は同義なんだ。でも、俺は自分自身を、他のうぬぼれ屋は行かないであろう色んな場所に行かせてきた。たとえば、キルトを着ることの何が虚栄心なんだ?




でも、ファッションの中にも虚栄心はあるよ。あなたは服をつくっているけど、ある人たちは、それを虚栄心によるプロジェクト、あなたは本気でやってはいないんだと考える。

だけど、俺が服をつくる情熱は人間性のためにあるんだよ。俺の情熱は人々のためにある。俺の情熱は、18歳の頃の俺のためにあって、俺の情熱は、俺のライブに来る子どもたちのためにある。俺はもっとやらなきゃいけない。俺はみんなに、もっとたくさんのもの、今はガラスの向こう側にあるものを、あげられなきゃいけない。俺は店の中に入って、何かを買えないことは、贅沢だとは思わない。贅沢ってのは、店の中に入って、何かを買えることだと思うんだ。

俺は、誰かは言えないけど、ファッション業界の奴と座って話した。でも、もしそいつが、この記事を読んでくれていたら、そいつは自分のことだって分かるはず。そいつは、俺がオフィスを出る前に言ったんだ。「もし、これと、これと、これが終わったら、何でもっとファッションをやらなかったの?」。それで、俺は「勉強してるんだ」って言った。でも、俺に話してたそいつは、クリスマスプレゼントを作らないんだ。誰もそいつの品物をクリスマスプレゼントに欲しがらないってこと。クリスマスプレゼントになるくらい、人々の感情に強く結びついた品物を作るんじゃなければ、俺に話しかけるなって話さ。
Mr. West at his Spring/Summer 2012 ready-to-wear collection show in Paris in October 2011.
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でも、同時に、これはグラミー賞の話と同じような気がするよ。何故なら、僕がずっと思っているのは、あなたが握手しようとしている人たちは、ある権力の回廊をコントロールしているかもしれないけれど、もうそれらは妥当な権力の回廊じゃないんだ。

俺はプロフェッショナルなミュージシャンだ。なぜなら、俺はユニバーサルレコードの組織を持っている。俺はプロフェッショナルなクリエイターだ。俺がルイヴィトンのスニーカーをやったときから、俺は商品を作るクリエイティブな組織に一度も継続して居ることが出来なかった。「僕たちが今考えてるのは、どうやって君をコントロール出来るかだよ」って俺に対して言ってきたミーティングだってあったくらいだぜ。ミーティングで、俺に!何で俺をコントロールしたいんだい?俺は世界がもっと良くなってほしいだけなのに!俺はポジティブが欲しいだけなんだ!俺はドープさが欲しいだけなんだ!何でそれをコントロールしたいって思うんだい?


だから、俺は「I throw these Maybach Keys(俺はマイバッハの鍵を捨ててやる)」ってラップしたんだ。俺はマイバッハの中に座るくらいなら工場に座るよ。
俺はみんなに伝えたいんだ。俺は世界のためにもっと創れる、それで俺はガラス天井を叩くんだって。俺が叫ばなければ、俺が何か言わなければ、誰も何も言わないんだ、分かるだろ?だから俺はそいつらに向かって「おい、俺に話してみろ。俺を尊敬しろ!」って言うんだ。


俺の流行創りを尊敬しろ?

そうだ、俺の流行創りの能力を尊敬しろ。一度作り出せば、みんなが得する。世界中が勝利するんだ。子どもたちが得して、クリエイターが得して、会社が得する。

俺は、カニエ・ウェストが意味するものは、スティーブ・ジョブスが意味するものに近くなると思うよ。俺は疑う余地無く、インターネット、下町、ファッション、文化におけるスティーブだ、終わり。大ジャンプでね。俺は誠実にそう思うんだ。何故ならスティーブが亡くなったから。ビギーが亡くなったから、ジェイZがジェイZになれたように。

俺は、過去4年間の最も文化的に重要なアルバム(YEEZUS?)に繋がった。過去10年間で最も影響力のあるアーティストに肩を並べた。スティーブ・ジョブズ、ウォルト・ディズニー、ヘンリー・フォード、ハワード・ヒューズ、ニコラス・ゲスキエール、アンナ・ウィンター、デイビッド・スターン。

それは、俺が持つべき責任だと思うんだ。可能性を広げて、人々に見せる。「物事はこのレベルにまで成り得るんだぜ」ってね。だから、もし君がカニエ・ウェストという名前の載った物を手に入れたら、それは最も可能性が広がっている物のはずだ。俺は何十億にもなる会社の社長になるはずだ。何故なら、俺は答えを持っているから。俺は文化を理解している。俺は核心だ。